《MUMEI》
櫻ノ木ノ下ニハ。ボクノリボンヲキミニ。
春くんは私を何故か
“リボンちゃん”と呼ぶ。

たしか、
春くんの家は、一家心中で誰も住まなくなった家を、
訳アリってことで格安で引き取ったと聞いている。


そういうお家に住んでいる人だし、
普段の安定してる春くんは、何となく見た目はカッコイイから、
一見、全然神経質に見えない。



でも、彼はとても神経の細い、弱い子なの。


だから、昔から死にたい、とかそういう類の、
マイナス思考な発言を彼がする度、彼はわたしを呼ぶ。



春くんの過去を全部知ってるのは、わたしだけだから…。



歩いていると、黄色いまるっこい車が、わたしの横をすり抜けて行った。


乗ってる人は、とても綺麗な顔の男の人で、
何だか自分以外の人の中に入っていける、するりとしたかんじの人だった。



誰かに似ているような、まったく知らない人のような気がした。

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