《MUMEI》
あなたに
「オレ……?」

不思議そうに呟き、頭を困ったように掻く。あまりの背の高さに顔がよく見えない。僕が小さいってのもあるんだろうけど。

「中学の時から噂で聞いてました。無敵最強男って」

「は、恥ずかしいからそれ二度と言わないでくれな。…で、なんでまたオレなんかに会いたかった訳?」

「それは……ケンカの仕方を教えて欲しくて」

たかがこんな理由で梅田にきたのかって言われたら、うんと頷くしかない。それだけ僕には大事な問題だから。

「ケンカの仕方?アイツらやっつけんの?」

「違います。アイツらは本当にどうでもよくて、……ケンカの仕方っていうか人の殴り方が知りたいんです」

「泉くんって…可愛い顔して物騒なこと言うんだな…」

「顔は関係ないと思います。それよりどうして僕の名前知ってるんですか?」

「うん、それはだな」

先輩はどこからかゴミ袋を出してきて、僕に渡す。結構な重量だ。持ちきれなくてふらついてしまう。先輩は笑って僕の腕から袋を取り上げた。

「あ…これ」

「ゴメンな。これだけしか集められなかった」

袋の中に入っていたのは、僕の学校中にばらまかれた成績表。

「どうして……」

「さぁ、なんでかな。オレにもわからない」

そう言って、先輩は苦笑した。

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