《MUMEI》
キスは涙味
,




私は仕事を今まで以上に頑張った。




モデルになって………





雅樹と一緒に芸能活動するんだもん………




雅樹が待ってるから………














「雅樹…」



病室に入り、私は雅樹に優しく声をかけた。




「あっ!!秋菜!!今日も来てくれたのか!?めっちゃ嬉しい!!」




雅樹は何時も笑顔で私を迎えてくれる。




だから私も笑顔になる。




雅也から聞いた…



雅樹のこと………




雅樹は心臓病なんだって……




医者によると、高校に入った時ぐらいかららしい。



一人暮らしを始めて、人気もあって雅樹が一番輝いていた頃…



雅樹は自分でそんな病気にかかっているとも知らずに、芸能活動を………



雅樹自身が心臓病だと分かったのは雅樹が高3になってから…


喘息や頭痛…めまいが激しく、私に隠して、病院に行ったらしい。



時々、何も言わずに出て行ったのは検査の為だった…。





やっぱり、あの咳はむせただけじゃなかったんだ………




「秋菜ぁ〜俺さっ……ゲホッ」



「雅樹!?大丈夫!?」



私は優しく雅樹の背中をさすってあげた。



「ごめん…ゲホッ…俺…こんなんで……ゲホッゲホッ」




「無理して喋らなくていいよ…私は此処にいるからね」




雅樹…
雅樹の傍には私がいるから……


無理しなくていいよ…



私は雅樹が笑ってくれているだけで十分だから……




「秋菜……俺…秋菜を幸せにしたい……」



「私は雅樹がいるだけで幸せだよ…」



「こんな俺でも……??」



「雅樹は雅樹だもん……」



「うっ……あっ秋菜っ……」



何で……



「雅樹が泣くのよ…!!」



私まで…



泣いちゃうよ…




「秋菜……大好きだ……愛してる……秋菜だけだっ…」



「私もだよ…雅樹……」




雅樹は起き上がり、私にキスをした。





その時のキスは………





涙味で少しだけ








しょっぱかった………










,

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫