《MUMEI》
復讐したい相手
「人の殴り方を教えてくれ、泉くんはそう言った。だけどその前にいじめてたヤツらを懲らしめることを考えるの無駄って言った。…ということは、殴る相手はアイツらじゃない…」

僕は唾を飲む。

「わざわざ人の殴り方を聞く、それが意味するのはただひとつ。誰かに対して深い恨みを持っているから……じゃないのか?」

やっぱり頭の良い人なんだ。僕なんかに比べて遥かに…。

「先輩の言う通り、です。恨みを持つ程、復讐したいヤツがいます。だから――…」

「良かったらなんで恨みを持ったのか、聞かせてよ。師匠なんだから、それを知る権利くらいないか?」

「ハイ。話します…。お時間大丈夫ですか」

「君みたいに可愛い子なら、野郎でも全然OKだから」

「可愛いって……言わないでください」

とてもすごい人だって尊敬するけど、それだけは許せない。僕にだって男としてのプライドくらいあるんだ。

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