《MUMEI》

自棄に近い。
男に欲情しただなんて、ツンはどう見ても男で背中も筋肉が張っているし顔も女のコにうけそうな今時な顔なのに。


奴の空気が異質だ。
女性とはまた別の醸し出す艶やかさ。

誰かの背中を擦るのに気が狂いそうになるのは久し振りだ。
忘れていなかったとも言うべきか。

しっとり濡れたうなじに張り付く髪や、背骨から尾骨にかけて流れる水滴。

確かにそこに彼は存る。


「……みきすね」

気が付けばツンの背中に頬擦りしていた。

「ああ、ごめん……」

泡が頬を拭った手に張り付いた。

「謝るのは何故?」

ツンは振り返り、惜し気もなく裸体を晒した。
隠すものは何も無いと言わんばかりに長い足を投げ出していた。

彼の体はそのままスケッチされそうな均整さで、知りうる人間の中でも群を抜いた美がある。




くらりと眩暈が伴う気がした。

ジィちゃんが間違えたのがよく分かった。

「俺は別にみきすね嫌いじゃないし、それくらいなんでもないけど?」

その笑顔で、何人もの女のコをオトしたのか。

しゃがんで割れた腿の間の俺の中心を娜かな指が違和感無く撫でた。




眩暈が止まらない。

「どきどきする?」

ツンが朗らかに質問した。
咄嗟に立ち上がる。

「冗談だよ」

ツンは両手をひらひら振って安全性を強調する。

「へんなことばっかしてると、こ……恋人に嫌われんぞ?」

必死の抵抗も苦笑いで済まされたようだった。

こいつが一人だなんて考えられないけどな。
女性が彼のことを放って置くはずが無い。


下半身が奇妙な感覚だった。
相手は男という正論と這い上がる本能が絡み合って足取りが重い。

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