《MUMEI》

「ぁあ?」
琉が下から上に目線をずらして、
佑を威嚇した。

「だから
亜衣に関わんな」





「ね-、亜衣、
あのイケメン、知り合いなの?」
美夏がヒソヒソ声できく。
「………幼なじみ。」


あたしはそっけなく答えた。
あたしは意味がわからなかった。



「〜〜〜〜…」
「〜〜〜〜〜〜…」
二人はお互いを挑発しあうような、小さい声でポツポツ喋っている。

琉の胸倉を、
掴んだままの
佑の手を、
琉は見てて痛いほど
強く握った。

「ふざけんじゃねえ…」

小さい声で
そう聞こえた。
佑の声だった。



ドスッ




鈍い音がした。
琉の頭を、佑が……












優しい佑。
あったかい佑。
いつも笑顔の佑。







寂しそうな佑。
辛そうな佑。
苦しそうな佑。
怒ってる佑。
佑が…………


佑は、誰に




怒ってるの……?








佑が、







琉の頭を殴った。





琉はその反動で後ろにあったテーブルにぶつかり、倒れこんだ。


佑は
また拳をを肩の高さまで
ふりあげた。

琉もキツい睨みを効かせて
今にも殴り返そうと
していた。


……………

「…………。


やめて…………」

あたしの目から、
思わず涙が溢れた。





ねえ、







なんでこんなことになってるの?







なんで佑が人を殴ってるの??








なんで、こんな大事になっちゃってるの?











ねえ…
ねえ……

「………佑………」








今にも殴りかかるお互いの中に、
ざわつくの食堂に、

あたしは
弱々しく叫んだ。



「………やめて…」



だけど、
2人には届かない。










あたしのどんな声も
いつも聞き付けて
助けに来てくれた
佑の
耳に






あたしの声は
もう



届かないの?




ドスッ




またお互いの拳がお互いの顔に交差する。









あたしの心臓も







同じ痛みを感じてた。








「もうやめて…
やめてよう………」



あたしはその場に座りこむ。
唯が心配して肩に手を
のせる。

クラスの女子何人かが
先生を呼びにいった。

美夏は深刻そうにあたしを見つめている。


上級生は楽しそうに拝見している。






ねえ…。
やめて。
やめて。やめて。
やめて。やめて。やめて。やめて。


「やめてよ!!!!」







あたしは
やっとでた
大きな自分の声に
フラついた。

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