《MUMEI》

佑はあたしが
涙を零している
のをみて、
驚いたようにみえた。



琉は、怒りを静めて、
食堂を後にした。




「佑…なにしてるの?」
あたしは怒りと哀しみの混ざった
押し殺すような声でいった。


「なにしてるのって、
お前、誰と話してたのかわかってるのか?!」

佑も怒っていた。



あたしを心配してくれている表情だった。


「誰って…琉だよ…」


「……りゅう?
お前、あいつと名前で呼び合うほど親しくなったのかよ?」

佑があたしの肩に手を置く。
「……そんなの勝手でしょ…」

「んな訳あるかよ…。あいつと関わったら、身体目当てって噂はきいてな……」
「やだ!離して!」

あたしは
肩に手を置く佑のひじを思いっきりよけた。




が、



佑はあたしの片腕をしっかり掴んだ。
「やだ、離してよ!」

「離したら、またどっか逃げるだろ」


「…………
佑だって同じだよ。」



あたしは苦しかった。







「……?」

「琉が遊び半分?身体目当て?
それは佑のほうでしょ!?」


「な……だから、あれは」
佑が寂しそうな顔をした。

「………そんな男に、
琉をバカにできる権利なんてないよ」




あたしは俯いた。
佑の顔が見れなかった。


「………佑、痛い。離して…………」



虫のなくような声で
あたしはそう言った。



佑の握る力は次第に弱まり、
やがて
フッと外れた。



「ユウッ、大丈夫?いこっ??」
駆け付けてきたのは
サヤだった。
サヤは佑の腕にしがみつき、
そのまま佑と食堂からいなくなった。




あたしの握られた
腕は
ジンジンしていた。
熱くなっていた。



佑の力は強かった。
佑は男なんだ。
わかってる…
わかってる…………





けど、




あたしの知ってる
佑じゃないよ………





あたしはうずくまり、
その場で
泣き崩れた。

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