《MUMEI》 夢の狭間に眠れない夜だった。 風呂場のツンの姿が頭の中から離れない。 湯煙にその首筋に当てられてか……深夜まで目が冴えてしまった。 熱い冬だ。 芯が火照り湯たんぽを蹴る。 夢を見た。 知っている奴が、長い手足を投げ出しあの部屋の中で何をしていたか…… 子供なりにあの眼力に恐怖した。 一度見たら忘れられない毒気がある。 昔からその片鱗は見せられていた。 背中を流し合うときの不思議な感覚、高揚感。 誰からも理解されず彼のように振る舞えなかった。 だから皆彼を押さえ付けたがった。 規則で、力で、絆で…… そんなもの無駄なのに。 「……うん?」 時計に目をやると11時を回っていた。 「叩いても起きないんだからそのままにしておいたわ、ジィさんが散歩に行ったよ。 ツンちゃんも部屋でまだ寝てるから起こして来て。」 台所でバァちゃんは茶碗を洗っていた。 ツンを起こしに部屋をノックする。 何も音がしないので不安になって扉を開けた。 「おはよ……」 瞼を重そうに擦りながら布団から胸まで見せていた。 「この真冬になんで服着てねーの!」 あまりに非常識で動揺した。 足元に脱ぎ散らかした衣類が固まっていて布団の間から昨夜夢に出てきた太腿が露になる。 ほど好い筋肉が付いた脚線美だ。 彼のそれは一般男子を卓越した肉体だった。 「あっつかったんだもん。」 上体を起こすのも億劫なようで布団に包まりながら立ち上がった。 危うい足取りで前へつんのめりかけていた。 足で器用に衣服を掴んで着替える。 見てはいけないものと対峙しているかのような錯覚をさせる濃密な大気を含ませて。 昨日の風呂場よりも成熟した色気を纏っている。 時間を置くと美味しくなるのか? 前へ |次へ |
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