《MUMEI》
――秀幸と…
何故だか心がすげー静か。
だって俺は…諦める事に慣れている…。
辛い想いも慣れている…。
『裕斗…』
秀幸の静かな声…。
大好きな…声…。
俺は眼を閉じ…、一回だけ大きく深呼吸した。
『な、大丈夫…か?
迎え行こうか?』
「…え?」
俺は隆志を見る。隆志は俺を見つめながら薄く笑うと立ち上がり、俺の傍に来た。
そして俺に向かって二つ折りしたメモ用紙を差し出してだしてくる。
俺は黙って受け取ると、隆志はゆっくりと部屋を出て行った。
そして直ぐに玄関が閉じる音がして…
『おい、ちゃんと聞こえてんのか?
大丈夫か??』
「……うん…、ちゃんと…聞こえてるよ」
俺はメモを開いたまま動く事も出来ず、折角入れた気合いが風船の空気が抜けていく様に消えていくのを感じた。
−−−−−−−
伊藤さんと話した。
俺達の今までの事、今回の事全部話たから。
今日は裕斗のこと譲ることにしたけど、俺は諦めないから。 −−−−−−−−
――なんだ、全部知られてるんじゃ…
さよならだけ言えば良いのか…。
そっか…
「秀幸…、秀幸…」
『うん、大丈夫だから、余計な事考えんなよ?な、場所聞いてるから今から車で迎えに行くから』
「違うよ、ダメ…、もう俺秀幸と別れるって決めたから…、もう何がなんだかわかんないんだよー、もう…、
俺に優しくしないで」
涙が一気に溢れ出した。
声を聞いたら安心して、愛しくて、会いたくて…
大好きで…
「会いたくないよ〜、…会えない…、会いたいよ…、
助けて…、わかんない…、好き…、秀幸が好き…、でも…もう無理…、
別れる……別れて…
ヤだ…離さないでよー」
呼吸が苦しい…
苦しい…
『おい、裕斗、今行くから…、俺はな、何があってもお前を離さねえぞ』
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