《MUMEI》 見つかったタイキはギクリと振り返る。 そこには寝ぼけ眼でこちらを見ているミユウの姿。 いつの間に起きたのだろう。 「なに、してんの?」 どうやら、ミユウの位置からはタイキの手元は見えないらしい。 タイキは端末を自分の方へ引き寄せながら「べ、別に?」と答える。 しかし、無意識に声が震えていた。 「なに?なに隠してんの?」 だんだんと意識がはっきりしてきたらしいミユウは、ベッドから下りてタイキの横に座った。 タイキはその動きに合わせて端末を床に移動させる。 しかし、その途中で腕を掴まれてしまった。 「……それって、わたしの端末だよね?」 静かな声でミユウは言う。 「……そうだけど?」 「見たわけ?」 「……んなわけないじゃん。じ、邪魔だったからさ。だから、床に置こうと……」 「ふーん……」 ミユウは疑わしげな視線をタイキに送りながら、端末を手に取った。 そして、確認するようにそれを開く。 端末はメール機能を開いたままだ。 タイキが見ていたことは一目瞭然である。 ごまかしきれない。 「ねえ…」 画面を見た数秒後、ミユウは言った。 「見たよね?しかも、メール」 「………ごめんなさい」 ここで下手な言い訳をするのは得策ではない。 タイキは素直に頭を下げた。 そんなタイキをミユウは鋭く睨む。 「他のメールも見た?」 「いや。見てないです」 「本当に?」 「絶対に…」 タイキはまっすぐにミユウの目を見つめた。 するとミユウは一つ、小さなため息をつくと「ま、いいけどね。どうせ、あんたにはわかんないだろうし」と肩を竦めた。 前へ |次へ |
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