《MUMEI》

ピット・ロードを徐行するオレの視線の先に、岡ヤンが両手をブンブンと振って手招きしていた。

それが、ピット位置の目印になってくれた。


岡ヤンが被っているメットの、上がったままのバイザーの奥には、真剣な眼光が光っていた。

岡ヤン(早く来い!!)

1秒でも早くマシンを引き継いでレースに復帰したい心の表れだろう。


先ほどのオレもそうだった…。

オレは浮かれ気分から、ハッと我に帰った。

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