《MUMEI》
携帯
『なぁに?お母さん』
『だって‥あんた‥料理ダメでしょ?』
あたしは頬を引き攣らせた。
『五月蝿いわね‥ほっといてよ』
あたしは野良犬を追い払うような仕草をした。
母はしぶしぶキッチンを後にした。


―ピリリリ
母がキッチンを去った直後、あたしの携帯が鳴った。
あたしはエプロンで手を拭いてから電話をとった。
『もしもし?』
『ハイハーイ♪奈緒ー』
表示の時点で気付いていたが、木名瀬君だった。
『なぁに?木名瀬君』
『んーチョコ順調かなー?って』
『ちょっとぉ‥彼女を信用できないんですか?』
『してるよー。明日楽しみ♪』

―ピピピッ
オーブンが鳴った。
『ごめっまた明日ね。うん‥おやすみ』
あたしは携帯を閉じた。

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