《MUMEI》 告白なんだ、と、ネコを抱いたまま茂みから見上げると、 背の高い男と、あの子が 向かい合って立っているのが目に入った。 急いで茂みに身を隠す。 …いや、なんとなく。 盗み聞きしたかったってわけじゃないんだけど、 ほら、出るに出れないってゆーか… ―…うん、掃除時間に立ち話してるほーが悪い!!! 「…初めて見たときからずっと、好きでした。 ―…付き合ってください!!!」 …うわお。 告白シーンなんて、初めて聞いた。 オレは、内心ドキドキしながら あの子の答えを待った。 …しばらくして、 「…ヤジマくんは、りかのどこが好きになったの…??」 という小さな声が聞こえた。 「……え…」 言葉につまるヤジマくん。 少々の沈黙のあと、 「…えーと、可愛いくて、明るい、とこ…かな??」 という自信なさげなヤジマ君の声。 「…そっか。 …変なこと聞いてごめんね??」 「…いや、別に―…」 「あと、ヤジマくんとは付き合えない…」 「…え…なんで…!?おれなら、君に釣り合うと思うよ!?」 うわ、断られた。 …なんかちょっと安心してしまった。 にしても、ヤジマってヤツは そーとー自分に自信あんだな。 「りか、―…好きな人がいるの」 りかちゃんの言葉に、心臓が跳ねた。 「…そっか。 ―…いきなり呼び出してごめん。…じゃ」 「………じゃあ、ね」 しばらくして、 ヤジマの足音が遠ざかっていった。 『ニャー』 ふいに、抱いてたネコが鳴いた。 (こら!!!) と、慌ててネコの口をふさぐ。 聞いてたの、ばれたかな…!? 「…なんだ、ネコかあ」 あの子の声。 あーよかった。 ばれてない、ばれてない。 それから少しして、あの子の足音は遠ざかり、 聞こえなくなった。 大きく一つ、ため息をつく。 …もてるってのも、大変なんだなー… オレはネコを地面に降ろし、もう一度頭をなでてから 再びゴミ袋を持った。 あー重い。 前へ |次へ |
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