《MUMEI》

「えーと…
リーダー、やりたい人いる??」


梶野がグループ全員に問いかける。


「……………」

「オレはいや〜」



だって、美咲の迎えあるし!!
(でも、オレが電柱にぶつかりそうになったあの日から、
美咲は二人乗りを怖がるようになってしまった)



「…いないよな〜…
――仕方ない!!ここはおれがやるか!」



―…梶野!?


お前、ゆきちゃんの前だからって
カッコつけやがって!!!


ふと『姫』のほうに視線を向けると、

『姫』は瞬き一つせずに、梶野を見つめている。



…ん??


まさか。


まさか、『姫』…


梶野のこと―…!?



「えっくんが、副リーダーね♪」



梶野の声にはっとする。



「えぇ!?オレだめだって!!」



反論するが、



「だめー!!えっくんが誘ったんじゃん」



と、返された。



仕方ねえ。
美咲、帰りはお母さんに頼め。
…車の方が、安全だしな。



「…わかったよ」



答えると、



「えっくん偉い!!」



と、笑顔で背中を叩かれた。



―…全く、この笑顔に今まで何人やられたことか。


こいつ、何気にもてんだよなあ…

『狼少年』のクセして。


―なぜか、彼女がいたってことは
中学のときから無かったと思うけど…


そんなことを思っているとき、

ふと、
梶野に向けられた『姫』の視線を思い出した。



やっぱ、『姫』も梶野スマイルにやられた一人なのか…??



ん??



なんでオレこんなに気になるんだ…??



なんか変だ、オレ。

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