《MUMEI》

「亜衣?なしたあ?」
姉の麻衣がスパゲティーを
フォークでくるくる巻きながら言った。

「え?別に…」
「せっかく、亜衣が好きなミートスパゲティーなのにねー」






あたしは、言葉にならぬ
悲しみが込み上げてきていた。

お姉ちゃんとは年が離れているから、
喧嘩もしない

相談をたくさん持ち掛ける
あたしは基本迷惑な妹である。


でも、
恋らしい恋はしたことがなかったあたしは、
お姉ちゃんに
あたしの恋について相談することもなかった。



だから、
佑が何してたとか
体の男女関係の話しとかなんて
できるはずもないし…。




「ごちそうさまー」
「ちょっと…亜衣まだ食べ終わってないじゃん」
「お腹でも痛いの?」
「大丈夫か-?」

家族が心配する中、
あたしはふらり
自分の部屋に戻った。




「あ…琉に連絡しなきゃ…」

あたしは気の抜けた声でつぶやいた。


メールで
新規作成
「……」
今日の殴りあいを思い出す………

090XXX-XXXX…
M組 佐倉亜衣
です。
登録よろしくね。
今日、大丈夫だった…?




送信……っと。









プルルルルッ
プルルルルッ

「え??」

携帯を開くと
登録したばかりの名前表示。

小坂井 琉






いきなりの電話に
あたしは一瞬出るのに
戸惑った。

でも、
あたしのせいで佑と喧嘩した琉…


殴られてたし、
謝らなくちゃ……







ピッ
「もしもし…?」







この電話から、



あたしの


人生が






変わろうとしていた。

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