《MUMEI》

身体に蓄積されていた熱が、外気に晒され一気に逃げてゆく…

(涼すい〜!)


そしてライディング・ブーツを脱ごうと屈んだとき…

真新しかった両膝のパッドに、擦りキズがついているのが目についた。


それはオレが膝擦りの壁を越えた"証"のキズだった。


オレは、ルーティーンの最終ラップに訪れた歓喜の瞬間を思い出した…

だが同時に『もっと早くコレが出来ていれば…』と悔やみもした。


オレはコース上で躍動する岡ヤンの姿に目を移した。

華麗に……豪快に……路面に膝を擦りつけながら、コーナーをクリアしていた。


『もう一回……走りてー…』

オレは独り言を呟いた。

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