《MUMEI》

不意に昨晩の兄貴を思い出したからだ…。


兄貴は昨晩バイトから帰ると、NSR の保安部品を外す作業を遅くまで行っていた。

オレが床に就く頃まで、ガレージの灯りはついていた。

その上、今朝オレが6時に目覚めたときにも、兄貴は既に起きていて NSR をカリブ(ワゴン車)に積んでいた。

もしかすると一睡もしていないのかも知れない…。


兄貴は寝る間も惜しんで NSR をレーシング・マシンに仕立て上げたのだ…。


レースを戦っているのは、オレと岡ヤンだけでは無かった…。

そんな兄貴を知っていたからこそ、岡ヤンも許したのだろう。


オレも、高イビキをかく兄貴を許した。

そしてピット前に立ち、岡ヤンの走りを黙って見つめていた…。

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