《MUMEI》

「…ごめんなさい。
なんか、ほっとしちゃって…
へんなの。えっくんの前だと弱虫になっちゃうみたいだ」



えへへ、とりかちゃんが赤くなった目をこすりながら小さく笑った。



「―…強くなる必要なんて無いと思うけどなあ」



オレがつぶやくと、りかちゃんは不思議そうな表情でオレを見上げた。



「りかちゃんぐらい可愛いと、護ってくれる男なんていくらでもいるんじゃない??」



オレが笑って言うと、



「…りか、本当に欲しいものは、いっつも手に入らないんです。
…努力したって…
親友も、―…好きな人も。」



そう呟いたりかちゃんの横顔があまりにも寂しそうだったので、
オレはりかちゃんの頭にポン、と手を置いて



「心配すんなって!!
りかちゃんのホントの可愛さを知らない奴が多すぎんだよ!!

いつかはいいヤツが現れるって♪」



なんて、カッコつけて言ってみた。



「…そうですよね!!
梶野せんぱいも、
こんな可愛い子ほっとくはずないですよ!」



りかちゃんに笑顔が戻ったのでほっとした。



…でも、梶野はどう見ても
ゆきちゃんから気持ちが揺らぐことは無さそうだ…



あー…


複雑な気持ちだ…

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