《MUMEI》
ピンキーリング
次の日の帰り道、オレはりかちゃんと一緒に帰る理由も無くしたので、
一人で自転車をこいでいた。


すると、前方に見覚えのある背中が。



「…りかちゃん??」



恐る恐る声を掛けると、
りかちゃんはびくっとして振り向いた。



「…どしたの」



訊ねると、りかちゃんは



「…どこかに…落としたみたいで…
…あの、指輪…」



と、泣きそうな顔で答えた。



「マジ!?…探すの手伝うよ!!」

「…いえ、もう、いいです…!!
えっくんに迷惑掛けられないし…
もう、いらないものだし…!!!」



そう言って、りかちゃんが苦しそうに笑う。



「…だめだよ」



考えるより先に、口走っていた。



「…え…」

「りかちゃん、ホントはその子と仲直りしたいんだろ??
…親友に、戻りたいんだろ…??

ちゃんと見つけて、“もう許してる”、って伝えなきゃ!!」



そう言って、オレは自転車を停め、
指輪を探し始めた。



「………はい!!」



りかちゃんは、震える声でそう言うと、
再び、探し始めた。



りかちゃんは、自分の気持ちを伝えるのが苦手なんだろう。


―…器用に見えて、不器用なんだ。



「…相原先輩に、謝られちゃいました」

「…へ??」



探し始めて1時間くらい経った頃。

いきなりのりかちゃんの声に、驚いて聞き返す。



「協力、出来ないって」

「………」



そっか、ゆきちゃん、気持ちに気づいたのか…



「…えっくんみたいなキレイごと言うんです。
…でもそれが、あんまり堂々としてて。
…完璧に、負けました」

「…キレイごと、かあ…」



思わず苦笑する。



「…でも、りか、全然落ち込んでないんです。
…なんでか、分かります??」

「…??なんで??」

「…えっくん、すぐ答え訊くんですね」



ふふ、とりかちゃんが笑う。


自然な微笑みだった。


思わずオレも笑顔になってしまう。
りかちゃんから目線を外し、ふと下を向いたとき。



「あった…!!!」



ピンキーリングが、草の茂みに隠れて、
控えめに光っているのを見つけた。



「りかちゃん!!あったよ!!!」

「え!!?ホントですか!!!」



りかちゃんが駆け寄ってくる。



「ほら」



拾い上げたリングを、りかちゃんに手渡す。



「…ほんとだ…」



りかちゃんの瞳に涙の膜が張る。



―…それは夕日に輝いて、とてもキレイだった。



「…ありがとうございます…!!」



そう言って笑ったりかちゃんの笑顔は、
今までで一番可愛くて、


…綺麗だった。



「どういたしまして!!」



りかちゃんの役に立てて良かった。


りかちゃんを笑顔にできて、
…その笑顔を見れて、よかった。


お礼言いたいのはこっちの方だ。


だって、


りかちゃんの笑顔を見るだけで、




オレは、
こんなにも幸せな気分になれる。

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