《MUMEI》

「俺は色んな意見を聞こうとしたまでです。
そう例えば好きで好きでやっと一緒になった人がいます。その彼が自分の親と会ってくれる約束をしてくれました。
しかし互いに都合が取れなくて会うのもままなりません、たまに会えるようなものなら愛を体で確かめ合う日々です。
拒むような隙さえ相手は与えてくれません、そんな時貴方ならどうしますか?」

テレビと同じようにカッコ良く高遠先輩は微笑みかけた。
 
「えっ?彼?」

「佐藤!例えばだから!」

木下先輩が声を張って遮る。

「そうですね、俺なら先手を打って親と話つけて相手と鉢合わせるように仕組むか、相手の肉親とか会いに行くよう後押し説得してくれる味方増やしますね。」

「……佐藤って意外に策略家なんだね。」

木下先輩は二、三度瞬いて感心された。
俺って実はそんなに良い子ちゃんばかりしていた訳でもない。

要領良く立ち回って今まで生きていたつもりだ。

「へー、楽しい後輩見つけちゃった。木下先輩より話し相手になってくれそう。」

「悪かったなつまらない人間で!」

「先輩は同士だからいいんですよぅ」

「同士ですか?」

「佐藤、こいつの話はマトモに受け取らなくていいからな!」

木下先輩は結構本気で高遠先輩に対応しているように見えるけれど。

同士と言われてみると二人の匂わせる雰囲気は少し似ている。共通点はそれといって無い、それなのに不思議と同じ空間に存在しているとやっぱり似ている気がしてくる。

「俺の愛おしい人は年上なんだよ?」

高遠先輩は語り始めた。

「とても強くてカッコいいくて、エッチも上手で余裕たっぷりに抱き抱えてくれるんだ。」

「完璧じゃないスカ」

年上か。いいな。

「完璧過ぎるから、何処で息抜いてるのか分からないんだ。いや、絶対抜いてない。 だから俺を認めて貰って本当の息抜きできる場所になりたくて……

これは我が侭なのかな?」

いえ、ちっともおかしくないですよ。
なんだか、高遠先輩かわいいし。こんなかんじで相手もオトされちゃったのか?


「高遠、そんなに好きなら電話でもなんでもすればいいんじゃない?」

全くその通りではあるのだけれど……。

「木下先輩、譲れない意地があるんですよ。」

高遠先輩が言うことを分からない訳でもない。
相手から言い出して欲しいんだ。

木下先輩は内館先輩に何不自由無く愛されているから想いが均等で偏った感情は知らないんだな。

付き合ってても想いの方向や形は様々で、好き以外の伝え方もある。

高遠先輩は相手のアプローチを待ちたいようだ。

「高遠先輩が溺れるくらいの人なら見てみたいなあ。写メないんですか?」

純粋に世の女性達を魅了して止まない若手俳優の心を射止めたどんな人物か気になった。

「えーどうしようかな」

高遠先輩は勿体振りながらちらりと木下先輩に視線を送る。

「……だめだ」

木下先輩は首を横に振る。

「じゃ、後ろ姿だけー。誰にも言わないでね?」

「高遠!」

木下先輩には従わないけど指示は待つんだな……。

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