《MUMEI》
体育祭
体育祭が始まった。

どうせオレは昼からしか出番がないので、
校舎裏の非常階段で寝ることにした。


メガネが邪魔だ…

メガネを外し、割らないように端におく。


おやすみー…




―…どれくらいたっただろうか。


人の気配で、目が覚めた。



「……ん…」

「あ!…やっと起きましたね〜!!」



寝起きで、頭も眼もぼんやりしててよく解らないけど―…



「…りかちゃん…??」

「…正解です!!」

「あれ?何でいんの…??」

「ずっと探してたんですよ??
他の先輩に聞いて、やっと見つけたと思ったら、全然起きないし…」

「…ご、ごめん…」

「いえ、こっちが勝手に探してただけですし☆
…ってゆうかえっくん、メガネ外すと印象変わりますね…」

「…??そ、そう…??」

「はい。…外した方がカッコいい…です」

「??…そりゃどーも」



な、なんだ…??

なんか、りかちゃんの顔近い気がすんですけど…


オレは、たじろぎながらもメガネを拾い上げ、かけ直す。



「あー!!かけちゃった」

「え??だって無いと見えねえもん」

「りかがせっかく…」

「??せっかく、なに??」

「……なんでも、ないです!!」



なんか、りかちゃん変だぞ…??



「…えっと、りかちゃんオレに用事あったんでしょ??」

「あ!!そうそう!!」



りかちゃんは嬉しそうにそう言って、



「じゃーん!!」



右手をオレに差し出した。


その小指には、あのピンキーリングが光っていた。



「…仲直り、できたんです!!
…綾乃も、ずっと謝りたかった、って…
ピンキーリングも、ずっと持っててくれてて!!

―…ほんとは、りかに相談される前から、
綾乃もあの人が好きだったみたいで…

気づかないで相談してたりかも悪かったんだなって、
気づかされました」

「…よかったね」



オレは微笑んで答える。



「…えっくんのお陰です!!
本当に、ありがとうございました!!!」

「…そんなことないよ!!
りかちゃんが頑張ったから、だよ」



頭を下げるりかちゃんに、声を掛ける。



「あ、…オレさ、聞きたいことあるんだけど…いい??」



りかちゃんが、顔を上げる。



「―…結局、あの『落ち込まなかった理由』って、なんだったの??」



オレが聞くと、


りかちゃんは、ふふ、とイタズラっぽい笑みを浮かべて、



「体育祭が終わったら、教えてあげます♪
りかも、やんなきゃいけないことあるし☆」



と、答えた。



「え〜!?気になるじゃん!!」



オレが反論すると、



「りかが頑張って探してたのに寝てたのと、
りかが頑張ろうとしてたときに寝ぼけてた罰です!!!」



と、意味不明の言葉を残し、



「じゃあ、また後で〜☆
…あ、徒競走、始まりますよ??」



と言うと、階段を駆け下りていってしまった。



―…って、やべ!!

オレ、徒競走でなきゃなんねんだった!!!



オレも、慌ててグラウンドへ向かう。



…それにしても、ホントに変だったな、りかちゃん…



―…まあ、体育祭が終わったら何かしらわかんだろ!!



オレは、編成所へと駆け出した。

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