《MUMEI》
二人の剣
「・・・そんな、彩!!彩!!」
リースに抑えられている式夜が腕の中でもがく。
式夜を抑え付けているリースもギリっと歯を食いしばる。きつく握られた手は爪が食い込み血を流していた。
「・・花びら・・か?」
シンギが周囲に舞う花びらに目を留める。
そして、視線を彩詩に向け・・
「馬鹿な!!」
そこにあったのは大量の薔薇。そしてソコから伸びる蔓はシンギの持つ双剣に絡みついている。
ポタ・・
シンギの肩に血の雫が落ちる。
直上から逆落としにシンギに一直線に彩詩が突撃する。
ギィィン!!
反射の動きで彩詩の突撃を受け大きく距離を開ける。
受け流し切れなかった一撃は右肩を大きく切り裂いていた。
上空から地面へと降り立った彩詩の背に翼は無く、左腕も力なく垂れ下がっている。
否、立っている事さえ不可思議な傷。
全身に刻まれた傷は数え切れず、骨折した箇所も多数に及ぶ。
「我が体は・・血に濡れている。」
左腕に薔薇の蔓が絡みつく。
「罪は消えず・・」
薔薇の棘は確実に彩詩の体を傷付けていくが、左腕が力を取り戻す。
「己の心を侵食する。」
クリムゾンローズの刀身には紅い線が蔓のように走り、柄に刻まれた装飾は彩詩の手に絡み付くように同化している。
「幾千のヒトを殺し、」
傷つき、動かなくなったはずの箇所に蔓が絡みつき、傷を広げながらも通常と変わらぬ動作を可能としていく。
「それが・・その剣の能力か。」
シンギが双剣を構える。
今までの構えとは異なる、逆手に構えられた双剣。
微塵の容赦も油断も無い。全身全霊を賭けた自身の最強の連撃。
吹き上がる炎は纏わり付く蔦を焼き払い、漂う水はその圧力を持って蔦を引き千切る。

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