《MUMEI》
片付け
「えっくん!!!」



りかちゃんの声に振り向く。



「…なにしてんですか??」

「え??…いや、みんな片付けが悪いから…」



オレは、みんなが散らかした応援グッズやらお菓子のゴミやらを集めていた。



「…掃除のおばちゃんみたい」

「…だって、誰かがやんなきゃさー…」



そう言いながら、最後のゴミを拾い上げる。



「…えっくんのそういうとこ、りか、好きですよ??」



りかちゃんがオレを見上げて、にっこりと微笑む。



「そりゃどーも♪」



そう答えて、近くのゴミ箱にゴミを捨てに行こうとする。

すると、



「…えっくん!!」



りかちゃんに呼び止められた。



「ん??」



立ち止まり、振り返ると、



りかちゃんにメガネを取られた。



「うわ、なに!?」

「…いーから、そのまま聞いててください!!」



両手が塞がってるオレは、なす術なく立ちつくした。



「りか、今ちょっとお芝居してきたんですよ」



…唐突に、何の話だ…??



「相原先輩に、
“梶野せんぱいのことはもういいです”って言ってきました」



ああ、それで『お芝居』ね…



「でも、そこはお芝居じゃなくて」



ん??…どういうこと…



「最後に、寂しそうな顔してきました。
―…そうしたら、相原先輩も頑張るかな、って」

「え??…でも、そうしたら、梶野とゆきちゃんが―…」

「だから言ったじゃないですか!!
“梶野せんぱいのことはもういい”って」



…だめだ。


混乱する。


メガネ取られたから、りかちゃんの表情もぼやけて読み取れない。


えーと、りかちゃんはもう梶野のことは諦めがついてて、

それで―…



「えっくん、」



りかちゃんがふいにオレを呼んだので振り向くと、

りかちゃんは背伸びして、




ちゅ、とオレの頬に

小さくキスをした。




「………!!?」



驚いて、手に持っていたゴミを落としてしまった。



「は…!?―え!!?」

「…だって、えっくんさっき寝ぼけてたから、できなかったんだもん」

「…じゃ、なくて!!
―…なんで、オレ―…??」



混乱が深まる。



りかちゃんが、に、と笑って答えた。



「―…さっきの答え、教えましょっか??」

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