《MUMEI》
蒼と白銀と黒
「公園が消し飛んでる・・」
遅れて到着した狩月たちの声が聞こえる。
抉れた地面を迂回し、狩月達は上に残っている式夜達と合流した。
「・・・リース、それに式夜も、無事だったんだ。」
狩月が二人の姿を確認し、安堵したように息を吐くが・・式夜とリースは白銀の髪をした女性を見たまま固まっていた。
「?」
狩月は頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら、二人を見ている。
「姉・・さん?」 「ロアさん・・ですか?」
二人は震える声で尋ねる。
「久しぶり。元気だった?」
なんでもない事のように話しかけるロア。
「そんな・・だって姉さんは・・」
「そう、確かにロア・アーキルスは死んだわ。」
エミが無表情に告げる。
ロアは居心地悪そうに顔を背ける。
「じゃ・・じゃあこのヒトは・・」
「偽者では無いよ。正真正銘ロア・アーキルスだし、肉体だって彼女の物よ。」
エミは淡々と事実だけを告げていく。
「そんなの矛盾してるじゃないですか!!死んだはずのヒトがどうして・・」
式夜が声をあげる。
「人工アンデット・・そう呼ばれるモノよ。フィリアス教で作り出された悪魔の技術を持って蘇った死者。私と同じように・・」
いつの間にか合流していたレイが静かに、だが憎悪が篭った声で断言する。
「嘘・・」
「真実だよ、私も同じように教会に実験体として居たから言い切れる。」
エミがリースを見ながら答える。
「もっとも、彼女はロア・アーキルス本人で、記憶や性格もそのままに残っている。生前と違うのは髪の色、そして一度死んでしまったという事だけ。貴方達がどう取るかは知らない、だけど私は彼女を一人のヒトとして扱う。絶対に化け物なんて呼ばせないし、道具だとも言わせない。」
決意の篭った瞳でエミは式夜とリースを見る。
「迷惑・・だよね。私がウロウロするなんて・・」
ロアが意を決したように言葉を口にする。
「・・・違う!そんな事無い。姉さんが居て迷惑だなんて思わない。」
「ありがと、けど・・どのみちもう昔みたいには生活できないだろうし・・」
教会の所有物、そういう判断をされるとエミは説明していた。
エミやレイのように13課に入れられ戦う事になるだろうと覚悟していた。
寂しげに笑うロア。

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