《MUMEI》
魔姫の理解そして決断
ミスアは怖がっていた、それは化物や死ぬこと等ではなく、目の前に立って一方的に喋っている天使に対してだ。 何も言っていないのに自分の立場を言い当て、何も示してないのに魔法を使った事を見破り、そして何より、コイツは

"私が不幸だと言った"

違うと言ったら嘘になる、事実、ミスアはここの生活から離れたいと思っている。

「ねぇ…もしも、私が不幸だって判るんなら…不幸の理由って、…解ったりしないよね?」

ミスアはかなりの勇気を出して聞いた、だが返事はすぐに返ってきた。

「君が今やりたいことは?」

「………え?」

「だから君がしたい事だよ!例えば…そうだな…あ!旅行に行きたいとか!彼氏が欲しい!とか、君の望むものが一つや二つあるだろう?」

ミスアは最初、何を言われたのかよく解らなかった。
だが、快楽の言っている事はなんとなくだが、理解する事ができた。

「つまり…私のやりたいことは…そのまま私の不幸を打ち消す材料になるってこと…?」

「そのとおり!いやー!物分かりいい人は楽だね〜♪」

ミスアは確実に、そしてしっかりと"理解"した。 そしてゆっくりと"決断"した。

「じゃあ…確認のために聞くけど…私の願いは…あなたが叶えてくれるのね?」

「うん?そうなるね!」

「じゃあ…願い事…良いかな?」

「いいよー♪」

天使は実に楽しそうに答える、だが、魔姫は実に神妙に…二つの願いを口にした。

「一つ目は…私を魔界から出させてほしいの、」

「…?何故?此処は君の故郷だろう?」

「此処じゃ私は期待に応えられないもん!無理だよ…非情になるなんて…」

快楽は流石に空気を読み、笑うのを止めた。

「ちっちょっと…飛んでる間がいろいろ飛んじゃってる!?…理由を…聞かせてくれる?」

ミスアはゆっくりと頷くと、長い間の思いを口にした…

「私は…魔界の王の娘として…魔姫として産まれてきた…幼い頃から色んな事を学び、見て、修得してきた…別にね?それ自体は苦じゃなかったのよ?でも私は…ある日気付いたの…魔物と闘う時に………"私は敵を殺せない臆病者"なんだって…」

「………………………」

快楽は思ったことを素直に言うことを決意した。

「君は…優しいね…」

「え?…優しいって…何?」

元々魔界には魔王族以外は"優しい"や"愛情"などの概念が無い、魔界の生き物は、"子供"を産まない。産むのは魔王族だけだ。なので、魔界には寿命が存在するのは、魔王とその一族だけだった。
なので、ミスアは父親の魔王、シギから少なからず愛情を受けて育ったが、ミスアはそれを"愛情"、"優しさ"であるということを理解できなかったし、また、シギも教えようとはしなかった。

だからミスアは"優しさ"を知らなかった。

「優しさっていうのはね、他人を思うことのできる心のことさ。」

「?????」

「…うわぁ…本当に知らないっぽいね…」

しばらく快楽は考え、一つのことを決心する。

ミスアがこの話に乗ってくれるのを期待しながら、しかし、確かに乗るであろうことを確信して、淡々としかし力を持って、一つの"提案"を紡ぎ出した。

「よし!じゃあ俺が君に"優しさ"を教えてあげる!」

「え!?」

「まぁ確か君は魔界から出たがってたよね?じゃあ俺と一緒に人間界に行かない?実は俺も行くつもりだったしね!」

「え?あ、う、うん!いいよ?」

半ば強引な流れで決まったが快楽は気にしない。

「よっし!決まった!じゃあ人間界に行く前にもう一つの願いを聞こうか!」

「あー…えっと…二つ目の願いは…"私の婚約者になって欲しい"なんだけど…」

「……………………ああ!!そうか!ドッキリだ!…で?ホントの願いは?」

「違う!ドッキリじゃないよ!!だから…私の婚約者になって欲しいの!!」

「…とりあえず…人間界に行こうか?そこで話そう?」

言うが否や快楽は右手を地面に叩きつけた、瞬間、快楽とミスアは魔界から有無を言わさず人間界へと移動した。


†少年の困惑と混沌へ…………

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