《MUMEI》
一位なのでは……
「よぉやったよ。褒めて遣わそう」

七生がハイになって盛り上げる。

最後の決勝で俺達のクラスは途中棄権した。

怪我人が出たのだ。

七生の目の前でバク転した人が転んで、七生は避けたけどその後ろにいた人は病院へ運ばれた。

事態は騒然。

俺達は茫然。




玄関まで救急車を見送り終えると例えようもない後味の悪さが残る。

「……分かってたから。
ステージに皆で立った瞬間、確かに一番だったんだ。
偶然起こった事故だろ、誰も責めねぇよ。今日は学校祭だ。
何があってもおかしくない、さっきのあれは名誉の負傷だ!
俺達は堂々と胸張っていいんだよ!」

七生の一声でしんみりした空気が変わる。
張り詰めていた顔が弛緩して、俺達は気後れせずに体育館に戻れた。

運ばれたクラスメイトも軽傷で済んだと連絡が入り、俺達を見る人の視線も気にならないくらい騒げるまでになれた。

無事で何より、安心した。

30分後学校祭再開。



自分達から棄権は申し出た。
学校祭の一部の時間を奪ってしまった訳だし、一人欠けたままじゃ物足りない。
けじめというやつだ。

仕方ない、向こうに一位は譲る。

二位で我慢してやるさ。


一位になったクラスに最高の舞台を作るため俺は休む間も無く放送部として責務を果たす。

スカートを穿き変えることも忘れ、仕事を全うした。

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