《MUMEI》 クールビューティ俺が好きになったのは、いわゆる禁断の相手ってやつで。 同じ男で、高校教師。 生徒会顧問の、ガチガチの堅物。でも女よか、綺麗なカオ、してる。 「八嶋!また遅刻か?!」 今日も今日とて校門で服装チェックと来たもんだ。真面目だねぇ、このくそあちいのにネクタイきっちりでスーツときたもんだ。恐れ入るぜ。 「ぎりでセーフにしてくれよ静香先生〜 」 ニヤニヤしながらからかう。静香なんて女みたいな名前だから、クラスの奴らはみんなからかい半分で奴を名前で呼ぶ。俺もその一人だ。 「ふざけるな。一点減点だ。五点でトイレ掃除と反省文だからな。覚えておけ」 お〜こわ。 「そんなだから氷の静香なんて呼ばれんだぜ。もっと笑えよ、美人なんだから。」 「!!い…いい加減にしろ!教師をからかうな!」 あ、カオ真っ赤。案外純情なのね先生。 「全く…そのちゃらけた態度、直せ!もう一点減点するぞ」 照れてる時眼鏡直す癖。 男なのに、可愛いと感じてしまう。 キーンコーン あ、予鈴だ。 「ホームルームの時間だな、先生。」 静香先生ははっとしたように俺に怒鳴った。 「さっさと教室へ生きなさい!」 俺はわざとゆっくりと歩き出した。 「よ〜芳樹、お前氷の静香ちゃんに目ぇ付けられてるってホント?遅刻常習者で反省文だって?案外それが目当てかよ。」 悪友の遠藤がわざわざからかいに来た。 てめぇのクラスは隣だろうがよ、ご苦労なこった。 「やめとけよ、あのクールビューティ静香ちゃんを落とそうなんてよ、逆立ちしたって無理ってもんだぜ。あれはな、暁学園のアイドルってことで眺めて楽しむもんだ。」 「そもそも男をアイドルにすんのもアレだな。」 俺は苦笑した。 「ばーか。男子校に女なんかいるかよ。教師にすらいね〜からな。潤いがねーんだよ潤いが」 「淋しい青春だなオイ。」 遠藤がふいに人の悪い笑みを浮かべた。 「でもよ、実際いるらしいぜ、男同士で付き合ってる奴ら!」 え?まじで? 「三組の畠山と武藤先輩。結構有名だぜ噂。」 へ〜…。二人とも結構イケメンで、女の子にもてそうな奴らだったけど…。武藤先輩なんて野球部の部長じゃねーか。 「気色悪くね?そーゆうの。いくら男子校だからってよ〜」 「ふぅん」 カワイソウにな。ばれちまって。心底同情すんぜ。俺なら一生隠し通すぜ。つらすぎるからな… 「早く夏休みになんねぇかな…」 暑過ぎ。六月だってのに… 「お〜い、八嶋いるかぁ?」 がらりと教室の扉を開けて、担任が呼んだ。 「うい〜、なんすか?」 「有川先生が呼んでる。お前古文落っことしたんだろ。放課後補習だとよ。」 げ。忘れてた。静香先生の補習じゃんかよ。 「せんせ〜俺放課後バイトなんすけど。」 「知るか。お前が悪いんだろ」 ばっさりきるね〜茂原。その性格は嫌いじゃねーけどちときついんじゃね? 「何八嶋。古文落としたのかよ。だっせー」 「人のこといえんのか遠藤!てめぇだって数学補習じゃねぇか!」 「あ〜うるせー!お前らのはどんぐりの背くらべなんだよ!おい遠藤、お前はいい加減教室戻れ! 五時間目始まんだろ!」 有川の怒声が響き渡った。 放課後。ドキドキの個人授業。なんてな〜ばか。 でもまさか、補習俺一人なんて思ってなかったぜ… 「何ニヤついているんだ?補習がそんなにうれしいのか?」 相変わらずつれないね〜 そんなとこもカワイイけど。 「ね、先生。」 好きな人いる? |
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