《MUMEI》 放課後、付け馬のように俺の後を付いてきたHとSは、あいつが来ると喫茶店に行かないかと誘った。 あいつは一瞬不安の目をして俺を見た。 鬼芦達に襲われた恐怖を思い出したに違いない。まだ守ってやらねばならない。 今日は帰ろうと言おうとした瞬間、あいつはいいよ、とHに言った。 サッド・カフェでさらに悪友のNが加わった。 「俺はH。地誌学科3年だ。水泳部」 「Sだ,よろしく。情報工学3年。陸上部」 「俺は法学部4年。合コン部さ」Nが笑いながら言った。 偶然だが、俺たちはそろって180センチ前後の上背だ。だが俺をのぞく3人は体重80キロ級で横幅が広い。 Nのボロ車に皆で乗ると車がかなり沈む。挟まったあいつがますますかわいらしく見える。 俺の悪友どもは俺と同年代だが、全く趣味や考え方が違う。しかし、Hと知り合い、友達の友達という具合に知り合った中で、何となく気が合う連中が集まるようになった。お互いに気楽で、激論を交わしもするし喧嘩もする。 何時間も一緒に喫茶店で粘り、安い飯屋を探し、賭け麻雀でいかさまをやり合う。ときには、俺は奴らの論文を見てやったり、代わりに書いてやったりする。 あいつはごった煮の様な、しかし気の良い俺の仲間を気に入ったようだ。 最初、鬼芦達のように自分の肉体を狙っているんじゃないかと警戒していたようだが、この日の談笑でその懸念は霧散したようだ。 「へー、お前バイク乗るのか?」 悪友達は、もうあいつをお前呼ばわりだ。 「うん。ホンダ750さ」 「どのくらい出るんだ?」 「うーん、分からないな」 「スピードメータぐらい見れるだろ?」 「・・・いつも振り切れてるから分からない。この間、白バイに追いかけられたけどすぐ諦めてたよ」 みんな一瞬ぎょっとしたが、すぐ大笑いと冗談が飛び交った。 こいつ等の機転は早い。あいつもだ。 前へ |次へ |
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