《MUMEI》

 俺と悪友達は俺の下宿に来て、酒を飲んで騒いだり、麻雀をして徹夜すること度々であった。

 あいつもそれに加わるようになった。

 春休みの前のある夜、俺たちは冬休みのバイトで稼いだ金でウイスキーを買い込み、痛飲した。
 数日後からまた新たなバイトが始まるのだ。

 皆のろれつが回らなくなった頃の真夜中過ぎに、あいつの携帯に電話がかかった。

 あいつはやばそうな顔をして電話を切った。
「・・・俺、帰るよ。爺ちゃんが心配してここまで来るって言うんだ。だからもう帰るって言った・・・」

 あいつは立とうとしてよろけた。

 俺はあいつを送っていくことにした。他の連中は限度を超えていていびきをかいている。
 俺は下宿の前であいつとタクシーに乗った。

 とっくに終電が通り過ぎた長沢の駅前で、タクシーを降りた。
 ここからあいつの家まで歩いて、少しでも酔いをさまそうとしたのだ。

 あいつとゆっくりと坂の道を上っていって小さな公園まで来ると、あいつは辛そうに言った。

「ちょっと休んで行く」

 俺はあいつの手を取って、公園のベンチに連れて行き一緒に座った。

 端から見れば恋人同士に見えるだろう。あいつは下を向いて辛そうに息をしていた。
 あまり酒に強くないあいつに、こんなに飲ませたのを俺は後悔していた。

 あいつが俺にもたれ掛かった!

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