《MUMEI》

着信が入っていた。
すぐかけ直す。

『裏口開けておいたよ』

久しぶりの我が家は塀で囲われていた。俺が入る時間になるまでに連絡すると光が開けてくれる。

侵入するのも慣れたもので光の足跡に添って歩く。
オフクロ達の新居はまだちゃんと見ていない。
バァさんの趣味の畑を挟んで建ててあるのでシルエットで見る程度だ。

「……光、みきすねと寝たのか?」




クソ、切られた。

信用している。
光は心底俺に惚れているから。
自惚れではなく、信用だ。

俺は試されていて、そして回りくどいことと知りつつ光は伝えたいことを別のことにすり替えて探られたがっている。

本音を知りながら光を迎えに行く。

はっきり言ってくれても構わないのに、口を閉じてキスになる。
俺はねだられればなんでも暴露するつもりなのに光はどうしても俺の口から語らせたいようで、それがいつのまにか意地の張り合いになっていた。


愛おしい光。
早く俺の元に帰っておいで、でないと笹川千寿の二の舞になってしまう。

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