《MUMEI》

「そういや明日からハワイだっけ?」



「うん、ちゃんとバッグ買ってくるから心配すんなよー」






裕斗はファースト写真集の撮影でハワイに行く。




ハワイ行く奴に買い物頼むのはお約束だ。



「いや、裕斗じゃ忘れそうだから毎日メールしてやる!」




「はは、信用ねー!
まあ俺もそう思う!
どんどんメールして」




裕斗は立ち上がり冷蔵庫から烏龍茶を出してきた。





俺の分も差し出されて受け取けとる。



「いっつも思うんだけどさー、何で痩せてんのに黒烏龍茶なんだ?いっつもこれしか飲んでなくね?」


「うん?、普通に美味いじゃん、嫌い?」



「嫌いじゃないけど…うーん」




そういやこいつ、ファミレスじゃ必ずピザだし朝は納豆じゃないと腹立つって言っていた。



ドリンクバーはひたすらアイスコーヒーだけだし…



「な、裕斗ってさ、トイレは同じ場所使うタイプだろ?」



「あー。普通そうじゃないの?」




「自分を基準にして普通言うな、俺は何だってランダムだよ」




裕斗はあっという間に飲み干しキャップをしめている。



そっか、わかりやすい…、優柔不断なのは恋愛だけで他の事は確りしてんだな。




貰った烏龍茶を飲みながら裕斗を見る。




横顔が本当綺麗…。




格好良いし可愛いしで…。





俺、隆志の事は本当は忘れていない。





だけど自分が情けなくなるから頑張ってふっきっている最中。



それに俺だってこの二人に負けてらんない。





オーディションガンガン受けまくってドラマだって出たいし…、頑張んなきゃ。







――――あの日伊藤さんと別れた足で俺の所に来た裕斗。




前日の隆志との光景もあってめっちゃ腹立ってガンガン文句言っちゃったけど、俺の話一方的に全部黙って聞いてくれてた。



その後にどっちとも終わったって言われて、めっちゃびっくりしたけど…。





「な、正直さー、隆志と伊藤さんどっちがタイプ?」




「えー、ははっ、どっちもタイプじゃないよ、俺がタイプなのは加藤だよ!」




「え…」





ちょっと、おい!綺麗な顔で…おい!




「ははっ、ウソ!赤くなった!」



「こら…、バカか!」




俺は軽くゲンコツをくれてやる。

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