《MUMEI》 医術士の言葉と姉妹の決意二人を見送った後、診療所となっているテント内にはレイとロア、リースとキティホークの4人だけである。 入り口に「診療中立ち入り禁止」の札をかけ、ロアたちに向き直る。 「レイの前例があるから言い切れるけど、ロア貴女は確かに適合者のようね。」 静かに、真剣な声でキティホークは話を始める。 「もっとも適合者って言っても・・何が違うのかって言われると正直答えられないのが現状。貴女は一度死んでいる、こうして生きていること事態が完全に謎なの。だからどんな事が起こるかも想像できないのよ。」 診断書を捲りながら言葉を続けれる。 「医術士として言わせて貰えば、貴女はとても貴重で興味深い存在。でもね・・」 診断書を机の上に投げるとロアに一歩近寄る。 「教会の技術で蘇ったって話だけど・・その技術資料が在るわけでもない。」 さらに一歩、手を伸ばせばロアに触れることが出来る所にまで近寄る。 「つまり生き返った証拠が無い。」 ロアの頬に手を添え、座っているロアと目線を合わせる。 「だから、診断の結果、貴女は確かにロア・アーキルス本人である事は確認できたし、特に障害も無い事が確認できた。私が言えるのはそれだけよ。後は当人たちの問題。」 机の上にある診断書を手に取り、キティホークは一瞬で灰にした。 「それじゃ、私はしばらく仮眠を取るから。」 それだけ言うとテントから出て行ってしまう。 「・・・安心していいと思う。ホークは私の体の事もちゃんと診てくれるし、治療もしてくれる。エミも言っていたと思うけれど、書類なんていくらでも偽装できる。だから後は貴女達がどうするのかを決めて。」 レイもそれだけ言うとテントを後にした。 「・・リース、私は生きていて良いのかな?」 しばらくの沈黙の後、ロアが俯いたまま質問する。 「私は姉さんに生きていてほしい。だが・・姉さんが嫌だというのなら強制はしたくない。」 勢い良く立ち上がると、出口に向かって歩きながらリースは小さく声に出す。 それを聞いたロアは嬉しそうに微笑み・・ コン!っと軽くリースの後頭部を叩くと、 「お姉さん離れをできてない妹を放って逝ったら地獄行きになるじゃない。それに、問題だらけの友人も居ることだしね。そう簡単に死んでいられないよね〜」 涙声になりながらもロアは嬉しそうに笑い、リースも笑い返す。 前へ |次へ |
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