《MUMEI》
願い―秀斗―
..





「離してよっ!!!!



私に構わないでっ!!!!」






蘭ちゃんは、




俺の腕を振り払って、走り出した。





俺は……



ただ、ただ、




呆然としていた。





周りの奴らは…


俺のことを珍しいものを見るかのように、ジロジロ見てくる。





「見んじゃねぇよっ!!





失せろ!!」








俺は


そう怒鳴りつけ、近くの壁を蹴った。





そして―…




蘭ちゃんが行った方向とは、真逆に



走り出した。









蘭ちゃんの―…





存在を知ったのは、




入学式の時だった。




他の奴らとは、雰囲気が全然違って、



見とれてたんだ。




1人で、



表情一つ変えない彼女に



俺は見とれてた。




蘭ちゃんは、
何時も1人で


悲しい目もしてなかった。




見る度に、見る度に、



心がギュッと締め付けられるように痛くなった。




蘭ちゃんの噂を聞いたのは、



5月の始めの頃だった気がする。


俺は思った。



"彼女に近づくチャンス"


だと―……







初めて、蘭ちゃんの教室に入った時


目に入ったのは1人で時計を見つめる"彼女"だった。



俺は思った……。






"この子は何か抱えているんだ"


と―………………








力になってあげたい……




笑顔になってほしい……




俺は


そう思ってた。




だけど、




俺の行動全てが




蘭ちゃんにとって……




"迷惑"




だったんだと




今、





思い知らされた―……









―「離してよっ!!!!



私に構わないでっ!!!!」―





蘭ちゃんのあの涙のわけ……





俺は知りたいよ…





そして、





蘭ちゃんを



笑顔にしてあげたい―…






友達つくって



思い出つくって



皆で、泣いて、感動して





そして、



沢山、笑ってほしい…。





それが、







俺の―…………








願い……………













..

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