《MUMEI》
務め
「私、昭一郎と付き合うことになったの。」

レイは腕の中で言った。

だから、もう寝られないと言った。


俺の女遊びがひど過ぎると言うので、レイ自らセフレを名乗り出た。

それでも俺は他の人達と関係は絶えなかったが。

昭一郎も俺に負けず劣らずタラシだったので正直、驚いた。


今まで見向きもしなかったのにどうして?




苛立ちは抑え切れず荒んでいった。
そんな俺を昭一郎との時間を割いてまで説得しに来るレイは更に拍車をかけた。

子供過ぎる自分にもレイにも昭一郎にも納得がいかなかった。

親父もオフクロも誰も理解してくれない。
逃げ場所は自然とジィさんのとこになった。

話し相手にはならないけど、俺を心底呆れていることに安心する。
俺を戒めることはあっても買い被るようなことはしない。

唯一、俺を傍観するのがジィさんだ。

俺にはジィさんみたいに農家の婿養子なんかにはなれない。

それが俺がジィさんの若い頃に似ていると言われない絶対的要因だと思う。



バァさんを愛することが出来た、俺には何一つ得られないだろう幸福を得た。

そんな和やかな空気を吸うのも自虐的で止められない。



昭一郎が高校三になって、俺が高校一になると柔道部に入る。
昭一郎と近づきたかった。
大学生になればきっと昭一郎はここから離れてしまうから。

昭一郎に近づいて俺から奪っていったようにレイを奪ってやりたかった。

それにしても俺には役不足で、俺はただ虚しくなるだけだった。
昭一郎はいつだって俺の先頭にいて、敵うはずなかったのに。
俺は昭一郎を見て学んだ。
俺が成長するのになくてはならない存在は昭一郎だった。

俺はオンナにモテることだけが昭一郎に唯一勝てることだったのに、それまで奪われた。

哀しいより虚しいばかりだ。

俺には何もない。

奴隷しか手に入らない。




『殺し合って勝った方が彼女にしてあげる』

瞬く間に惨劇だった。
馬鹿みたいだ。

醜い姿をさらけ出して愛されるとでも思っているのだろうか。

俺が好きなら誰かを殺して赦されるのか。

感覚が麻痺していく。
俺は間違っている?
誰も何も言わない。

肝心なところは無視して俺を責める。

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