《MUMEI》

「俺も大好きだよ、加藤のこと」



「なっ!え?へ?」



ウソ!心読まれた!?





更に顔が赤くなるのが分かる。




つか躰があつい、やな汗出てきた!




「な、なんだよ俺もって!俺は裕斗の事…」




「はははは!可愛い〜の、俺のマンションで言ってくれたじゃん、
マジでもー加藤大好き!バッグは買ってやる程じゃねーけどさ」




「クソ…、そういえば…はあ」





ついそんな雰囲気の中言ってしまったんだっけ、秘密なんか作れねー単純バカな俺…。





「あー春が近いな〜」





「うん、今日は気持ち良い」





裕斗は眩しそうに青空を見上げている。





まだ2月なのに今年は変にあったかい。




今日なんてコートなんか邪魔な位だ。





遠くからギターの音がする。





練習なのかぎこちない。
同じ所を何度も立ち止まり、何度も繰り返す。










俺達はこれからもいろんな事を経験しては前に進んだり立ち止まったり、時には後退するんだろう。





いろんな人に会って恋もして、たくさんの色々な想いを繰り返す。






俺もだけど裕斗も今はギターの練習中みたいなもんなんだろう。






「少し寝ちゃおーかな」




裕斗は俺の膝を枕にしてベンチに転がった。



「全く、とことんだらけてんなー」





既に眼を瞑った横顔、綺麗な鼻筋。




鼻筋をぎゅっと摘んでやる。




「あー止めなさい」



「くそ、変な鼻になっちまえ!この鼻筋は反則だ」




ブタの鼻にしてやったら手を掴まれ、自分の頭に持っていった。



「いい子いい子してろよ、俺撫でられんの好きだから」




「するかバカ、そんな台詞は伊藤さんに言え!」





何だか俺も眠くなってきた。






暖かい日差しで冬眠したくなる俺って一体…。






裕斗は少し笑って、




軽い寝息をたて始めた。





仕方がなく俺はそれに付き合い、仕方がないついでに頭を撫でてやった。







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