《MUMEI》

1コーナーの立ち上がりのスピードは、明らかにパンチパーマの方が上だった…。


…2メートル…

…3メートル…


オレンジ色の NSR は、直角コーナー手前の短い直線で、オレとの差を拡げてゆく…。

1コーナーを奪われた時点で、オレの心中は虚無な"敗北感"で覆われていた。


小さくなってゆくゼッケン19の背中を睨むオレの目つきも、徐々に生気を失ってゆくようだった…。


(駄目だ……負けた……岡ヤン…兄貴……ギャラリーの皆…………すまない…。)


オレは自ら課してしまった"敗北の自己暗示"に陥っていた。

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