《MUMEI》
……出逢い……
死のう。
これで何度目だろう、そう決心したのは。
毎日繰り返されるイジメ。私はもう耐えきれなかった。いつしか、「私なんか生きてても意味は無い」そう思うようになった。
今日こそ。と、屋上のフェンスに手を掛けるけど、
やっぱり怖い。
今日も出来なかった。
「あ〜あ」
どうして私はこうなんだろう。
死にたい。それなのに、出来ない。
「いっそ誰かが殺してくれたらいいのに」
悲しかった。私は、死ぬことすらうまく出来ないのだ。


カーテンの隙間から、眩しい日射しが降り注いだ。今日も学校か…。
正直、学校にだけは行きたくない。でも、両親にバレたら……。
「行ってきます」
「あら、行ってらっしゃい」
何も知らない母が、明るい声で返す。 両親には知られたくない。もしもあいつらにバレたら、私はもっと酷い目に遭うことがわかっていた。
「…………………」
無言で教室に入ると、一瞬、教室のざわめきがかきけされた。しばらくして、クスクスと笑い声が聞こえた気がしたが、放っておいた。こんなのには、慣れっこだ…。
私は、黙ったまま、机の落書きを雑巾で消した。
「はーいホームルーム始めまーす」
声と共に、先生が入ってきた。先生の後に、小柄な女の子が続く。
教室が静まり返った。
「今日は転校生を紹介します」
先生が、黒板に転校生の名前を書く。
転校生が口を開いた。
「姫乃朝日です。よろしくお願いします」
彼女の声は、蒼く透き通り、少し幼くも聞こえた。彼女を見つめていると、彼女が私に視線を向け、にっこり微笑んだ。

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫