《MUMEI》

(おめでとう…)

…と健闘を讃えたいところだが、生憎今のオレはそんな心の余裕など持ち合わせていなかった。

とにかくオレは、パンチパーマのケツに喰らい付くことだけを考えてマシンを操っていた。


JOG のライダーは、浅い前傾姿勢のままS字クランクの手前で後ろを振り返った。

おそらくその目には、オレンジ色と赤白の2台の NSR が映ったことだろう…。


横暴なパッシングで他のチームから疎まれながらも、トップを走るゼッケン19のマシンと…

そのトップを僅差で追い上げるゼッケン8のマシン…


バック・マーカーならば、後ろから来た速いマシンにラインを譲るのが基本的なマナーなのだが…。

彼の裁定は、オレンジ色のマシンに対する、全てのチームの憤慨を代弁したものだった。

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