《MUMEI》
モノクロ
「捨てて来い」
私の腕の中で、今にも呼吸が止まりそうなほど小刻みに震えている子猫。
彼の視線はカラフルな映像を織り成すテレビに向けられ、私と子猫はまるでモノクロの人形の様。

「このままだと死んじゃうよ」
どうか彼が救ってくれます様にと祈りを込めて私は呟いた。

「知るか、そんなこと」

この世のどんな視線よりも冷たい彼の言葉に、本当に死んでしまいそうなのは自分自身だと気付いた瞬間、私は子猫を抱き締めて玄関のドアを開けた。
後ろは絶対に振り返らない。
そう決めた私の腕の中で、子猫は安心した様に眠りについた。

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