《MUMEI》
……悲劇……
「……ん」
朝か………。
私は、昨日の帰り道での会話を思い出してみた。
『似てたから。私と』
一体何処が?
『私と朝日はまるで正反対だよ?』
その後彼女が見せた、寂しげな笑顔。あの笑顔には、どういう意味が込められていたのだろうか。


「……行ってきます」
玄関を出ると、朝日が満面の笑みを浮かべて、立っていた。
「おはよう、小夏♪」
私は、驚きのあまり唖然としていた。
「………おはよう…えっと…どうしてここがわかったの?」ぼそりと聞いた。
すると、朝日が明るい声で答えた。
「だってここ、『福島』って書いてあるし」
いつ苗字を知ったんだ…。それより、わざわざ家を探し回っていたのか…?
一体どれだけ暇人なんだ……。
「ほら小夏!学校行くよっ!」
朝日に腕を引っ張られ、私はやっと歩き出した。

朝日…………。
昨日見せた、あの寂しげな笑顔はなんだったのか。結局その話題には触れず、学校にたどり着いた。
廊下で私達が話をしていると、木下が通りかかった。
木下は私をちらっと見た後、朝日をじっと睨むように見つめた。
マズい。
「朝日、ちょっと…」
私は朝日を人目の無い場所へ引っ張っていった。そして朝日に、
「朝日、あんまり私に構わない方がいいよ」と伝えた。
「なんで?」
すかさず朝日が返す。
「私に構うと、アンタまで目ぇつけられちゃうから」
私は、うつむき加減で呟いた。
すると朝日が顔を上げ、
「私は、怖くないよ。イジメなんて。小夏と居られたら、それでいい」
と、笑顔で話す。
嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになった。どうして昨日会ったばかりなのに、ここまで信用出来るのだろう。
私にとっては、不思議でならなかった。


今日の昼休み、悲劇は起きた。
朝日が、びしょ濡れで教室に帰ってきたのだ。
「ちょ、朝日、どうしたの!?」
私は慌てて彼女の元へ駆け寄った。
「ううん、大したこと無いよ。ちょっと濡れちゃっただけ」
嘘つけ……。
きっと、あいつらだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫