《MUMEI》 †死神界†「クッソ……何処にいんだよ、アイツ。全然居ねーし」 死神界の中の都会のど真ん中を、リンは苛々しながらほっつき歩いていた。 「ん?」 見ると、アイツの友達のナギが歩いている。 「ナギ」 俺が声を掛けると、ナギは驚いたように振り返った。 「なんだ、リンか。そんなに苛ついてどうしたんだよ?」 ナギが、俺に聞いた。 「ああ、頼まれてんだよ。アイツに依頼渡すようにってな」 リンは、手に持っている写真をヒラヒラさせた。 「アイツって、ああ、るりのことか。見つかんなくて苛々してんの?」 「ああ、全然居ねーんだよ、アイツ」 ナギが少し吹き出した。 「ああ、そら居ない筈だわ。だってあの子…」 しばらく間をおいて、ナギが言った。 「人間観察行ったし」 またかよ……。 「またかよ!…ていうかアイツ、なんであんなに人間観察ばっか行くんだ?」 俺がずっと疑問に思っていたことだ。 ナギが少し口角をあげる。 「好きだからでしょ、人間界が。決まってんじゃん。」 ナギが続ける。 「ていうかあの子は夢があっていいね〜。誰かさんとは違って」 何だと。 「なにが言いたい?」 睨みをきかす俺のことは無視して、ナギがいった。 「いつも笑顔で明るいし、優しいわ、人気はあるわ。」 俺が続く。「オマケに将来の夢は」 「ミュージシャンでしょ。」 と、ナギに先に言われた。 「私がいようとしたこと、言わないでよね。」 それはこっちの台詞だ、と俺は心の中で突っ込みを入れる。 「ま、依頼頼むなら、帰ってくるまで待った方がいいんじゃない?あ、でも一週間は帰って来ないと思うから、気長にまちなさいな。じゃっ」 一週間…。まあ良いだろう。彼女が仕事をしなければいけない日は、二週間後だ。帰って来るまで待てばいい。帰って来るのがあまりに遅かったら…。 「写メでも送ればいいな」 前へ |次へ |
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