《MUMEI》
まだ、大丈夫……?
もっと怒るかと思ったのだが、ミユウの反応は薄かった。
タイキはホッとしつつ、話題を変えることにした。
「あ、朝飯は?食べる?」
「いらない」
そっけなくミユウは応える。
やはり怒っているのだろうか。
タイキはなんとなく気まずい空気を感じ、特に行きたいわけではないのにトイレへと逃げ込んだ。

「………なんで僕がこんなに気を使わないといけないんだよ」
便座の蓋に座りながらタイキは大きく息を吐いた。

 数分後、いつまでもここにいるわけにもいかないので、仕方なくタイキはトイレから出た。
すると、ミユウは何事もなかったかのようにテレビを見ていた。
 彼女は朝のニュースを食い入るように見つめている。

そして小さく「まだ、大丈夫か」と呟いた。

何が大丈夫なのか、質問したい衝動に駆られたが、また彼女の機嫌を損ねるのも面倒だったので黙っていることにした。

「あんた、学校は?」
 テレビが芸能ニュースを伝え始めると、突然興味を失ったかのようにミユウはタイキに顔を向けた。
「サボる」
「ふーん。あんたみたいな真面目くんでもサボったりするんだ」
意外そうにミユウは頷く。
しかしそれ以上の興味はないらしく、彼女は退屈そうにテレビのチャンネルを変えていった。

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