《MUMEI》

「撮りますよぉー!」

後輩達がシャッタを切りまくる。

センター配置に男子スカート軍団が集まっている。
司会の七生以外はいつの間にかスカートを穿いていた。

しかし、化粧が落ちてないのは俺だけ……!恥ずかしい!

真ん中は止めて欲しかった。
肩に乗せられた七生の手に心が落ち着く。

「顔真っすぐ」

小声で七生のいい声が聞こえた。
髪を引っ張られて真っ直ぐに首を上げられ硬直する。

髪を触られたのに鬼怒川のときとは違う

…………キモチイイ。


久しぶりに七生に触られた。

俺は七生が好きだ。
好きなんだ。

今きっと振り向いたらキスしてしまう。

「……ブッ」

南に横目で笑われた。

嗚呼、バレてしまった!
ときめいていることに気付かれてしまった。



ちなみに一位は駄菓子詰め合わせだ。

『俺ってば最ッ強〜!!』

両手にいっぱいに持ち上げていた段ボールを投げ捨てマイクパフォーマンスも欠かさない。

ステージ場で軽い乱闘祭になっている。

馬鹿騒ぎのどさくさに紛れて七生が俺を立ち上がらせてくれた。

「ウッチー何してんだよー!」

支えてくれた手をクラスメイトに無理矢理引っぺがされてまるで予期していたかのようなタイミングで乙矢に受け止めた。

七生はそのまま胴上げされていく。

「離れたくないって顔してる。」

乙矢にも見透かされていた。

「…………俺、そんなに分かりやすいかな?」

今まで恋愛に関しては鉄壁の秘密主義だったつもりなのに。

「あいつだからだろ?
湿布貰ってきてやるから。」

なんだか、乙矢は俺より俺を知り尽くしているんじゃなかろうか。

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