《MUMEI》 雨宿りぽつり、ぽつり… また、ぽつり。 静かに降り始めた雨は、少しずつねこの体を濡らしていきます。 「家に入んなきゃ!」 濡れるのが嫌いなねこは、急いで小屋へと入っていきます。 ぽつ、ぽつ… ザー、ザー、ザー やがて雨は勢いを増してきました。 「今日は止みそうにないなぁ…」 ねこは小屋でうずくまったまま、じっと雨雲を見つめています。 そんな時でした。 チュンチュン! いつかの小鳥が、ねこのもとへやって来てこう言いました。 「ねこさん、お願いがあるのです。」 「何ですか?」 「この雨では、私は飛ぶ事ができません。 どうか雨が止むまで、ここで雨宿りさせてくださいな。」 「どうぞ、どうぞ。」 雨でビショビショの小鳥が可哀相だったので、ねこは快く小屋の中へと手招きします。 けれども小鳥は言います。 「いえいえ、私は中へは入りません。この屋根の下で構いませんから。」 そう言って、小鳥はねこの小屋の、僅かばかりの屋根の出っ張りの下へと羽を降ろしました。 「しかし、そこでは雨が入り込んできますよ?」 「でも…」 「遠慮なんかいりません。さぁさぁ、中へ入って下さいな。温かいですよ。」 ねこは、何故小鳥が遠慮しているのか分かりませんでした。 小鳥は少し躊躇していましたが、ねこの親切を断るのは失礼だと思い、ゆっくりと中へ入っていきました。 そして一言 「食べないでくださいね…」 ポツリと呟くと、今度は小屋の隅っこへ羽を降ろしました。 小鳥の声は小さく、本当に小さいものだったので、ねこの耳には届いていませんでした。 前へ |次へ |
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