《MUMEI》
優しい
教室に入って、まず自分の席に目をやった。

私の机に無造作に置かれている黒い筆箱。

宮田くんのだぁ……。


宮田くんは教室にいなかった。

トイレにでも行ってるのかな?

私は自分の席に座った。
宮田くんの筆箱はどかさずに、ランドセルから教科書を取り出し、机の中にぶちこんだ。


そして、窓から空を見た。青い空が何処までも続いていた。


「あっ。わり」


後ろから声が聞こえた。……と思ったら、宮田くんが筆箱を持ち上げていた。
その瞬間……。
筆箱の口からペンや定規がバラけ落ちた。




「わぁッ!……チャックあいてたのか。…気が付かなかった。」


そう言ってから宮田くんはばらばらに落ちた文房具を拾い始めた。



私は黙って宮田くんを手伝った。



こうゆうとき、何か喋れれば良いのにっていつも思う。


なのに何故か宮田くんとだけは上手く喋れない。



なんでだろー?





……なんて。考え事してるうちに宮田くんは全部拾い終わったみたいだ。



「中山。ありがとな」


宮田くんはそう言って私に笑いかけた。


「…うん」



また私は素っ気ない返事を返してしまった。


それでも宮田くんは何も言わずに、笑いかけてくれた。




そんな宮田くんをみて、私は
宮田くんって……優しいんだなぁ。
と思った。

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