《MUMEI》
夏休みが来た
水泳大会が終わって数週間すると、あっという間に夏休みが来た。

勿論剣道に休みは無い。
今日も明日も明後日もひたすら面をかぶって練習。

有河原樹も汗まみれで部屋に帰ってくる事が多々あった。


「ただいま〜」
「おかえり有河原」
「う〜洗濯・・洗濯」
そう言って洗濯機にユニフォームを放り込む有河原樹。
「沢村の胴着も洗うぞ〜」
そう言って有河原樹は俺の胴着を泥まみれのユニフォームと共に洗い始めた。
「あ〜お前!きったねーのと一緒にすんな!!」
「お前のも汚いだろ!」
そう言い合いしていると、寮長が来て『煩い』と言われてしまった。


―こんな‥なんでもない日々がずっと続くと思っていたのに‥事件は突然起こった。


校内キャンプファイヤーの日だった。


校内キャンプファイヤーは毎年夏に全校生徒により行われており、この学校の名物行事でもあった。
この日だけは祭感覚で浴衣を来てもいいという決まりがあったが、俺は勿論のことにTシャツにジャージと言うパジャマ的な格好だった。

部活有志の出し物や代表クラスの出し物でグラウンドはにぎわっていた。
しかし、正直言って俺にはつまらない行事だ。
なんの活躍も出来ないんじゃ…。
俺は1人屋上でコーラを飲みながら、普段はめったにやらない宿題をやっていた。
「y=3x(x−4‥」
「宿題なんてめずらしね」
いきなり声がして振り返ると、剣道部のマネージャー秋原智嘉【アキハラチヒロ】が、白地に赤の金魚を泳がせた浴衣をまといながら近づいて来た。
「秋?」
コイツはなにかと俺に突っ掛かって来て、そのせいかよくしゃべる。(はたから見れば言い合い)
「見てみてー可愛いでしょー?」
秋はくるりと一回転してみせた。
「あー金魚が子供みたいでお似合いだよ」
「なんだよー!うちは子供じゃないし!」
「つーか、用ないんなら帰って。宿題の邪魔」
俺は野良犬を追い払うような仕草をした。
「用はあるよ」
「…なに?」
「たっちゃん知らない?」
たっちゃんとは有河原樹の事で、コイツと有河原樹は小学校の頃からの腐れ縁なのだそうだ。
「……有河原?知らないけど…」
「そっか‥ありがと。ねぇ‥暇だからここで花火見てもいい?」
今日のフィナーレには花火も打ち上げられる。
「‥仕方ないな‥邪魔はするなよ?」

―平和な夜―
―平和な時間―


事件はこの後に起こった。

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