《MUMEI》 「今日は雨、止みそうにないですね。」 ねこはまた空を見上げます。 いつもなら大粒の涙を流した灰色の空は、ねこの心までその雫で濡らし、温度を奪っていきます。 けれども今日は特別。 ねこの隣には、小さな来客がいるのです。 ねこはそれだけで幸せでした。 一番寂しいと思う時に、隣に話せる誰かがいるのですから。 まるで、一筋の太陽の光が差し込むかの様に、ねこの心は暖かくなっていたのです。 しかし20年間で初めてのこの来客は、小さくなったまま、一言も話しません。 けれどもねこは、それで構いませんでした。 今、自分は一人ぼっちではないという温もりが、すぐ隣にあったのですから。 前へ |次へ |
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