《MUMEI》
佐伯陸
始めての機内食。





あまりの量に圧倒された。
一気にご飯とパンと蕎麦が出たのはびっくり。





ハワイに着いてもっとびっくりした。



だって外国なのにあちこちで普通に日本語がいっぱい溢れかえっている。








たまたま頼んだハンバーガーが俺の顔よりでかいし、つか不味いしで笑うしかなかった。








明日から撮影が始まる。
だから今日はやってみたかった事をしようと思い、今してしまっている。




…それはバーのカウンターで酒を飲む行為。





やっぱり年齢と立場上酒を外で飲むのは禁止されている。



たまに人のを一口貰う程度に収め、飲むのはもっぱら家の中限定。



正直言うと何回かは飲み会にも出た経験もあるけどマネにばれてめっちゃ説教された過去がある。



まあもう直ぐ二十歳だし?


直ぐに酒は解禁なんだけどこのいけないスリルは今だけって事で。





マネに、ホテルのバーなら少しの時間だけって約束で渋々了解を得て今、マティーニを飲んでいる。





カウンターで一人のんびりと…。




閉店一時間前狙ったからボックス席に少しだけ客が居る程度で静かな雰囲気。





マスターも俺に話かけてもこない。



いや、その方が気楽でなんだか和んできた。




俺は調子づいてバッグから煙草を出した。




加藤から無理矢理ぶん取ったジッポのライターで火をつける。




ああ、俺はもう酒も煙草もやめらんねーよ。








「隣いいかな」





「は?はい、どうぞ」




突然話かけられて心臓が飛び跳ねた。



つかこの容姿だからまず始めは英語で話かけられていたから余計。



つか俺の事知ってる人じゃなきゃ日本語で話かけてこない事分かっているから、酒飲んで煙草吹かしている現実をどう誤魔化すか一瞬で頭がいっぱいになった。





どう見たって今日夕飯食ったスタッフの中にはいなかった男性だ。




こんな格好良い人芸能人だってなかなか…って!!




「あの、失礼ですけど…、間違ってたらすみません、俳優の佐伯陸さんでしょうか」




「そうだよ、始めまして、坂井…裕斗君」






佐伯さんは柔らかく俺に笑いかけてきた。





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