《MUMEI》

    シャッ


七生がカーテンを降ろした。俺の腿を跨いで真上に影が落ちる。


「あのさ、口でスカート持ち上げるなんてエロ行為、普通はしないよ?」

何を吐かしてんだ。ハーパン穿いてるからエロくないだろ。

「……分かってないな。男の浪漫を。
見えないからエロいこともあるんだ。」



「……あにほへ。」

真顔でエロを語られても。

「…………二郎は天然過ぎて困るなぁということ。」

カーテンで遮られているのを確認してから抱きしめられた。懐かしい七生の匂いがする。
ずっとこれが嗅ぎたかった。



「二郎の触り心地気持ちいい……うん、うん。じろーだ。俺の二郎だ。」

七生の声が降り注ぐ。
後頭部に大きな手が回る。厚い胸板に顔を埋めた。
力が入らず結局七生の言いなりに顔を見せていた。



首筋に親指が当たり、我に返った七生は腰を落として俺に目線を合わせた。

「俺の特等席なのに。」

そう言って辛そうに眉間に皺を寄せている。

鬼怒川にキスマーク付けられてたのだろうか?

消してしまいたいと言わんばかりに何度も親指で擦られる。
擽ったくて思わず体が壁に攀れた。



「じろー、俺を見て」

七生の手が離れた。
名前を呼ばれるとキスして欲しくなってしまう。

「見てるよ。ホラ、俺の瞳に映る自分を見て。」

俺を覗き込む。
俺に熱視線な七生がカッコイイ。


もっと見て。

俺も見て。



多分、同じことを考えているだろうな。

一歩 一歩、四つん這いの七生が俺に吸い寄せられていく。俺は角に背を密着させて七生を待つ。
焦らしながら、焦れながら互いに心の準備をする。

七生の視線に絡めとられて身動き一つ取れない。

恨み言くらい言ってやりたかったのに今は七生の虜でそんな感情も吹っ飛んでしまった。

馬鹿みたいに七生にこの瞬間触ってもらうことしか考えられない。

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