《MUMEI》 「やっぱり、二郎はピンクだった。」 七生がスレスレの間合いを詰め俺を見上げている。 「ピンク?」 「グロスの色。絶対ピンクが似合うと思ってて。その判断に狂いは無かった。 二郎の肌に合わせたくて、イメージ膨らませながら女子と吟味したんだ。」 女子とだなんて……。 なんかむかむかした、妬いたのばれたかな。七生、口元緩んでいる。 「キスしたら俺にグロス移るよな」 七生、キスしたいんだ…………。でも、見てみたいかも ピンクのグロスの付いた七生の唇。 「舌は?」 質問に対して七生の答えは舌で俺の下顎を撫でるというものだった。 「……出す……?」 口に出して確かめないと不安でつい、独り言になる。 七生はお構い無しなようで長い舌を上へと伸ばす。 七生の目を閉じるのに合わせ舌を出してゆく。 バァン 閃光が走る。 花火が上がると同時に唇が重なった。 何度も花火が煌めく度に唇が七生に会いたがる。 躯も弾けてしまいそうだ。 「あー……キスってこんなに良かったっけ……ン」 七生がキスの合間に一言零す。 「……ふ、七生はいつもイイよ? ア 」 話そうとすれば直ぐ引き寄せられた。 「……わかった……」 口の中が蜂蜜みたいに流動する。 「……んー……?」 何が分かったのか。返事も返せない程蕩けてきた。 「……じろーがエロいからいけない……」 唇と無茶苦茶な解答を同時に押し付けて来た。 ちがう……エロくない。 もはや抵抗する余力も残らない程骨抜きにされた。 七生の接吻は眩暈を誘発させるので危険だ。 花火が鳴り止む頃には壁に力無くもたれている俺が出来上がっていてその様子を満足気に七生は眺めた。 「足まだ痛い?」 膝を掴まれ、壁に爪先が触れた衝撃に顔を歪めたので声を出さなくても俺の意思を読んだらしい。 「また お姫様だっこしてやろっか?」 七生がおどけるので、急激に恥ずかしさが込み上げて来た。 またも何ももう二度とさせるつもりはない。 弄ばれてることに腹が立って七生の右頬を引っ張る。 「怒っちゃヤダよ。」 胡麻擂りも無駄だ。倉庫でのことだってまだ謝ってくれてない。それにパフォーマンスでの無茶や高遠の誤解も。 思い切り首を横に振る。 「許してやらない……」 その視線が俺を捕らえて離さないまで。 前へ |次へ |
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